紹介状を書いたため、いつもより少し時間を過ぎてから診療所を閉めたカミルは、なかなか力の入らない足で階段を上る。日没が早くなった外はすっかり暗い。
ルーカスの対応は確かに疲れるものだったが、それにしても身体がだるくて仕方がない。脈に合わせてひっきりなしに頭痛がする。これではマギの出発準備を手伝えないではないか。なんとか気を取り直して、カミルは自分を奮い立たせる。
「ただいま。今日は遅くなりました」
リビングから沈黙しか返ってこない。ひょっとしたらマギは、既に客室で荷造りを進めているのだろう。
そう思ったが、カミルの予想に反して彼はリビングの椅子に腰かけていた。それだけなら何てことのない光景だが、いつもの彼とはなんだか雰囲気が違う。テーブルをぼんやりと見つめたままで、なんだか覇気がない。
「マギ?」
話しかけると、マギはゆっくり顔をあげてカミルを見つめた。それから逡巡して視線を逸らしたが、決して無視できない質問だからこそ、覚悟を決める。視線をカミルの顔へ固定して、はっきりと彼に問うた。
「お前……軍の人間だったのか?」
――はい、そうです。
そうちゃんと答えられたのかカミルは自信がない。膝から力が抜けてどさりと倒れ込む。床が冷たくて気持ちがいいと感じるのは人生で初めてだった。
